昆虫食、どうして「気持ち悪い」と感じるの?私たちの心理のフシギを解き明かす
多くの人が感じる「気持ち悪い」という感情の正体
学校給食で昆虫食が話題になったり、メディアで紹介されたりすると、「栄養があるのはわかるけど、やっぱり見た目がちょっと…」「気持ち悪いと感じてしまう」という感想を抱く人は少なくありません。実は、このように昆虫食に対して抵抗感を持つのは、ごく自然な感情だと言えます。
この気持ちはどこから来るのでしょうか? 今回は、私たちがなぜ昆虫を食べることに抵抗を感じやすいのか、その心理的な背景や文化的な理由について解説し、その感情とどのように向き合えば良いのかを考えていきましょう。
なぜ昆虫食を「気持ち悪い」と感じてしまうのでしょうか?
私たちが特定の食べ物に対して「食べたい」と感じたり、「食べたくない」「気持ち悪い」と感じたりする背景には、いくつかの要因があります。昆虫食に対する抵抗感も、これらの要因が複雑に絡み合って生まれています。
1. 文化や食習慣の影響
私たちが子どもの頃から食べてきたものや、周りの大人たちが食べているもの、そして社会全体の食文化は、私たちの食に対する価値観を大きく左右します。日本では、昔から昆虫を食べる習慣は一部地域を除いて一般的ではありませんでした。また、欧米の食文化が広く普及する中で、肉や魚、野菜が中心の食事が「普通」という認識が強く根付いています。
このような環境で育つと、普段食べ慣れない昆虫に対して、本能的に「異物」「食べ物ではない」という感覚を抱きやすくなります。食習慣は非常に強く、簡単に変わるものではありません。
2. 視覚や触覚からの情報
昆虫はその形、色、動きなど、見た目から「虫」という認識を強く与えます。多くの人が、日常的に「虫は衛生的に良くない」「害虫」といったイメージを持っているため、その形がそのままの状態で提供されると、どうしても抵抗感が生まれてしまいます。
例えば、エビやカニは昆虫と同じ節足動物の仲間ですが、私たちの多くは抵抗なく食べることができます。これは、エビやカニが「食材」として広く認識されているだけでなく、調理の際に見た目が生きた状態から大きく変化するため、心理的なハードルが低くなるという側面もあります。
3. 「ネオフォビア」という心理
人間には、新しいものや未知のものに対して不安や嫌悪感を抱く傾向があります。これを「ネオフォビア(新奇嫌悪)」と呼びます。特に食べ物に関しては、過去に危険なものを食べてお腹を壊したり、命を落としたりした経験が、本能的に「未知の食べ物は避けるべき」という防衛本能として組み込まれています。
昆虫食は、多くの人にとって未知の食べ物であり、安全性に関する情報がまだ十分に浸透していないと感じるため、このネオフォビアが強く働くことがあります。
抵抗感とどう向き合えば良いのでしょうか?
昆虫食に対する抵抗感は、決して悪い感情ではありません。それは、私たちが自身の経験や文化、本能に基づいて物事を判断している証拠です。大切なのは、その感情を否定するのではなく、その背景を理解し、冷静に情報を集めることです。
1. 正しい情報を知ることから始める
昆虫食に関する正確な情報(栄養価、安全性、環境への影響、世界の食文化など)を知ることで、漠然とした不安が和らぐことがあります。例えば、食品として提供される昆虫は、衛生管理された環境で飼育され、加工されていることを知れば、少し見方が変わるかもしれません。
2. 見た目の工夫があることを知る
昆虫食は、必ずしも昆虫そのままの形でお皿に乗って出てくるわけではありません。最近では、粉末状にしてクッキーやパン、パスタなどに混ぜ込んだり、ペースト状にして加工食品の材料として使われたりすることが増えています。見た目から昆虫とは分からない形で提供されることで、心理的な抵抗感もぐっと低くなります。
3. 無理に食べる必要はない
昆虫食を試すかどうかは、最終的には個人の選択です。抵抗感が強いのに無理して食べる必要は全くありません。しかし、昆虫食が世界的な食料問題や環境問題の解決策の一つとして注目されていることも事実です。
もし「少しだけ試してみたい」と感じたら、見た目が分かりにくい加工品から始めてみるのも一つの方法です。友達が「気持ち悪い」と感じていても、それはごく自然なことだと理解し、お互いの意見を尊重することが大切です。
まとめ
昆虫食に対して「気持ち悪い」と感じるのは、私たちの文化、視覚情報、そして本能的な「ネオフォビア」など、様々な要因が絡み合った自然な感情です。この感情を否定するのではなく、なぜそう感じるのかを知ることで、昆虫食に対する見方が少し変わるかもしれません。
昆虫食について正しい知識を学び、見た目に配慮した加工品があることを知ることで、抵抗感を乗り越えるきっかけになることもあります。しかし、最終的に食べるかどうかは個人の自由であり、お互いの価値観を尊重することが最も重要です。食に関する多様な選択肢の一つとして、昆虫食について冷静に考えてみましょう。