知ってる?給食の昆虫食

昆虫食は将来、学校給食に本当に出てくるの?

Tags: 昆虫食, 学校給食, 食料問題, 栄養, 安全性

はじめに:なぜ給食と昆虫食の話が出るの?

最近、学校の授業や友達との会話で「昆虫食」という言葉を聞く機会が増えているかもしれません。特に「将来、学校給食に昆虫が出てくるって本当?」といった疑問を持つ人もいるでしょう。なぜこのような話が出ているのでしょうか。

背景には、地球の人口増加や気候変動といった大きな問題があります。これから世界の人口は増え続け、2050年には90億人を超えると言われています。これだけ多くの人たちが暮らしていくには、食料を十分に確保する必要があります。しかし、今の食料生産の方法では、地球の環境に大きな負担がかかっています。例えば、牛や豚といった家畜を育てるには広い土地やたくさんの水、飼料が必要ですし、温室効果ガスも多く排出されます。

このような状況の中、将来の食料確保の選択肢の一つとして、そして環境への負担が少ないタンパク源として、「昆虫食」が注目されています。学校給食の話が出るのは、未来の食料や環境について考えるきっかけとして、あるいは実際に新しい食材として検討される可能性があるためです。

では、実際のところ、学校給食に昆虫食が導入される可能性はどのくらいあるのでしょうか。

現在の学校給食における昆虫食の状況

結論から言うと、現在の日本の学校給食において、昆虫が一般的な食材として日常的に提供されているわけではありません。多くの学校給食は、文部科学省が定める「学校給食摂取基準」に基づいて献立が作られており、栄養バランスや安全性が厳しく管理されています。

一部の学校や地域では、環境問題や食料問題について学ぶ授業の一環として、または食品としての昆虫を知る体験として、昆虫を使った食品を試食する機会が設けられた例はあります。しかし、これは学習目的や体験として特別なものであり、通常の給食メニューとして当たり前に提供されているものではないことを理解しておくことが重要です。

つまり、今はまだ「学校給食に昆虫が毎日出る」といった状況ではありません。

なぜ給食での導入が議論されるの?

それでも学校給食への導入が議論されるのは、昆虫食が持ついくつかの可能性に注目が集まっているからです。

栄養価が高い

昆虫は種類によりますが、私たちが普段食べている肉や魚と同じくらい、またはそれ以上のタンパク質を含むものが多いです。また、亜鉛や鉄分といったミネラル、ビタミン、食物繊維など、体に必要な栄養素をバランス良く含んでいるものもいます。成長期である皆さんの体づくりに役立つ栄養源として期待されています。

環境への負荷が少ない

家畜と比べて、昆虫は同じ量のタンパク質を生産するのに必要な飼料や水、土地が少なくて済みます。また、温室効果ガスの排出量も少ないとされています。食料生産における環境負荷を減らすための方法の一つとして考えられています。

将来的な食料の選択肢

世界の人口が増え続ける中で、将来的に安定して食料を確保するためには、様々な選択肢を持つことが重要になります。昆虫食は、新たなタンパク源として、食料の多様性を高める可能性を秘めています。

給食への導入に向けた課題

しかし、学校給食に昆虫食を導入するためには、クリアしなければならない多くの課題があります。

安全性の確保

食用として適切に養殖・加工された昆虫は安全であるとされていますが、どんな昆虫でも食べられるわけではありません。自然にいる昆虫の中には毒を持つものや、寄生虫、病原菌、環境中の有害物質(重金属など)を含んでいるものもいます。食用として養殖・加工される昆虫は、こうしたリスクを避けるための厳しい基準や検査が必要です。特に子供たちが食べる給食では、最高レベルの安全性が求められます。

アレルギーの問題

特定の昆虫には、エビやカニといった甲殻類に含まれる成分と似た物質が含まれていることがあります。そのため、甲殻類アレルギーを持つ人が昆虫食を食べると、アレルギー反応を起こす可能性があります。食品表示を徹底するなど、アレルギーを持つ人への十分な配慮が不可欠です。

心理的な抵抗感

私たち日本を含む多くの国では、昆虫を食べる習慣があまり一般的ではありません。そのため、「見た目が気持ち悪い」「食べるのに抵抗がある」といった心理的な壁を感じる人が多いのが現状です。これは文化的な背景や食習慣によるもので、簡単に変わるものではありません。給食に導入する際には、こうした心理的な側面への理解と、丁寧な説明が求められます。

コストや供給体制

食用昆虫の安定した品質での大量生産や、流通の仕組みはまだ発展途上です。給食に導入するには、安定した供給体制を築き、コストを抑える必要があります。

まとめ:すぐに当たり前になるわけではないけれど

現時点で、学校給食に昆虫食が当たり前のメニューとして登場する可能性は低いと言えます。安全性、アレルギー、心理的な抵抗、コスト、法規制など、多くの課題をクリアする必要があります。

しかし、将来の食料や環境問題を考えたとき、昆虫食が食料の選択肢の一つとして考えられる可能性はあります。大切なのは、不安や戸惑いだけで判断するのではなく、昆虫食がなぜ注目されているのか、どのような可能性があるのか、そしてどのような課題があるのかを、科学的な情報に基づいて冷静に理解しようとすることです。

将来、もし給食で昆虫を使った食品が出されるようなことがあれば、それは食料問題や環境問題について考え、多様な食材を知るための機会として提供される可能性が高いでしょう。その時には、この記事で得た知識を思い出して、冷静に、そして多角的な視点から向き合ってみてください。